梅花

和紙に墨と顔料 2001年

建設中の高層建築への反対運動:イエローキャンペーンへのリンク: link to yellow campaign

谷中ベイビー

東京の自宅のそばの裏通りには小さな石像が立っている。お地蔵さんだ。お地蔵さんは元々インドの神様で、中国経由で日本に伝わったが、その間に様々な神々が融合したものらしい。旅人と子供の守り神として信仰されている。

このお地蔵さんの前には毎日花が供えられている。うしろにはザクロの木とコカコーラの赤い自販機がある。

このあたりは、まだ道端にお地蔵さんがいくつも残っている場所だ。このお地蔵さんには日付と「梅花」という文字が彫られている。これは亡くなった少女、早春に逝った子供の名前だ。梅の花はまさしく早春にマッチしている。その日付は江戸時代の、富士山が最後に噴火した頃のものだ。

今ではこのあたりに彼女の家族や子孫は一人も残っていない。でも、ここの人たちはずっとお地蔵さんを掃除し、花を供え続けている。

わが家のすぐそばで新しいビルが建設中である。とても大きくて、まだ建設途中だというのに、すでにこの近辺からは空が失われてしまった。工事で土を掘り返していたとき、江戸時代のものと思われる古いお墓が五つも出てきた。梅花の両親の墓かもしれない。だがそこには花も供えられず、墓石もなかった。墓が廃棄され、巨大なビルが完成したら、そこにお墓があったことを示すものはなにひとつ無くなってしまうだろう。

これが今の日本だ。これがビジネスだ。だが、そういうことがいやなら別のやりかたなんて、いくらでもあるのに。

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