連句との出会い

寒河江光は、自己紹介するときに私がちゃんと発音できない漢字を示した。それは重要な絵文字だった。私の個展のタイトルだったのだ。私は驚かなかった。それは筆で書かれた複雑な文字であり、64画もあった。私がその文字を選んだのは美しかったからだが、白状すれば、どう発音するのかは知らなかった。

寒河江さんと私は話をした。彼は連句の集まりを主宰しており、そこに私を招待すると言う。連句は日本の詩の形式である。それは共同的であり、大勢で作っていく詩である。各々の人が前の句に続く句を書いていくのである。

私は詩人ではないし、日本語を学んでいないので、即座に断った。だが彼は私に、日本語を書いてほしいわけではない、私の詩句を言葉ではなく絵で描いてほしいのだ、と言った。

私はこれについて考えた。彼はイラストを描いて欲しいわけではないと言った。彼は、私に私の詩句を描いて欲しいのだ。私たちは絵と言葉をつなぎ、言葉と絵をつなぐのだ。私は、どんな風につなげるのかわからない、と答えた。彼は、自分もわからないが試してみるのも面白いんじゃないか、と言った。それで私はOKした。

その後私は考え込んでしまった。言葉とイメージの合成?別のもの同士の連結?私にとって、絵は言葉ではないし知的でもない。絵はインスピレーションの視覚の世界である。絵画はイラストのように簡単に対象を指示するわけではない。絵は内面から出てくるものだ。私の絵は油断のならない子供みたいなもので、自分の絵がどうふるまうのか、自分でもまったくわからない。それは制御不能なのだ。

私は神経質になってしまった。

私は小学校時代を思い出した。私は劇に出ていた。たいした役ではなかった。私は立ち上がって「マッチで遊ぶな」と言うことになっていた。これが私のせりふのすべてだった。劇の前の一週間というもの、私は眠れなかった。もしせりふが出てこなかったらどうしよう、と気になって仕方がなかった。

私は、連句セッションの前にこれと同じことを感じた。私の順番が来て、絵を見せるとき、もし絵が出てこなかったらどうしよう?不安な一週間が過ぎ、私にとって初めての連句セッションの時が来た。寒河江さんのスタジオは古い丘のてっぺんにあった。私は地図をたよりにたどりついた。ドアをノックすると、中に招き入れられた。すでに7人のメンバーは部屋に集まっていた。すぐに、有名な書家であり篆刻家の小田玉瑛先生がいるのに気がついた。他の大学教授、医者、詩人、歴史家に紹介されたが、それは私をますます緊張させるだけだった。

連句がいつものように始まり、最初の季語が余白を空けて書かれた。みんなは代わる代わる句を書いた。連句はある方向に、また別の方向にと成長し始めた。ついに、私が絵を描く番になった。私の前の人は、霧の中で川のほとりに立っている人についての句を書いた。私の頭はからっぽだった。みごとに真っ白だった。みんなが私を見ていた。私は白い紙を見下ろした。

ウィンストン・チャーチルは、英国の最も激しく厳しい時代の偉大な政治家であった。政治家になる前、彼は軍隊にいた。彼は二つの戦争で戦った。彼はまた、画家でもあった。彼は、世界で最も恐ろしいものは空白のキャンバスだと言った。

連句以前には、私はチャーチルのことばをまったく理解していなかった。

白い紙は私をあざけった。それは私を見上げていた。描けるものなら描いてみろと私を挑発していた。だが私はできなかった。私は手を動かすことができなかった。しかし、私を見ている余白をなんとか埋めなければならなかったので、私はズボンから小さなアドレス帳を引っぱり出した。アドレス帳に鉛筆があった。私はそれをとり、古いカレンダー・ページの上で動かし始めた。鉛筆は一本の線を引き、また別の線を引いた。すぐに紙は線でいっぱいになった。その線が何かのかたちに見え始めた。それは、何年も前にニューヨークで描いたブルックリン橋のスケッチのように見えてきた。連句セッションの最中にアドレス帳から橋が飛び出してきたのに驚いて、私は描き続けた。数分の間、私は自分がどこにいるかも忘れていた。

私が目を上げたとき、みんなはまだ待っていたので、私は橋を掲げた。「ブルックリン・ブリッジ!」それが霧の中で川端にいる人々につながったので、私は驚き、喜んだ。私は救われて、ほっとした。私はカメザワさんを見た。彼は私に続く句を書かなければならなかった。彼は顔色が悪いようだった。私には彼の表情がわかった。私がいたので彼は混乱したのだ。今度は、彼が絵に言葉をつながなくてはならなかった。

12月2002年, a new Ren Collaboration with Poet, Sagae Ko - an Exhibition of a startling new makimono in the Ginza, Tokyo
1999年の展示の案内状
 
2000年の展示から

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